ふくふくにしてくれた人。

 8年前の冬、恋人と初めて会いました。大学1年生でした。その頃わたしは確か人生で最も痩せていて、彼は会ったときのことを今でも「なんだかげっそりしていて、顔色があまりよくなかった。」と笑いながら話してくれます。

なんだかいろんなことがあって、ご飯をあまり食べることができず、1日1食が普通だったりしました。体重もどんどん減っていき、それでもまあまあ元気だったと思います。何よりも、1日1食だから、食が細くて、外食がとにかく嫌いで苦手でした。学生時代の飲み会はほとんどキャンセルしたくらい。本当に嫌いだった。

そんなとき恋人に出会って、付き合う前に、「わたしはお外でご飯を食べることが苦手です。それでもいいですか」と確認をとったことを覚えています。

最初はあまり食べられなかった、公園で美味しいパンを買ってきたり、食べに行っても半分は食べてもらったり。ご飯を一緒に食べる回数が増えるにつれて、少しずつ食べる量が増えていった。

やっとちゃんと食べられるようになったのは、4年くらい前。働き始めて、お互いが社会人になり、お酒を嗜んで。気づいたら、とてもよく食べるようになっていて、あの頃に比べたら、ふくふくになって、恋人に「食いしん坊」と言われるくらいに太ってしまった・・。

もうすぐあれが食べられるね、とか、去年あそこで食べたあれ美味しかったね、とか。そんな話ができるようになった。ずいぶん助けてもらったなあと思う。たぶん、とても心配をかけたと思う。

でも、あなたのおかげで、わたしはいっぱいご飯を食べられるようになりました。

そんなことを、つい最近こんな本を読んでいるときに考えた。

 

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

 

 

僕らのごはんは明日で待ってる (幻冬舎文庫)
 

 瀬尾さんのこの本の中にこんな文章がある。

「入院して思ったんだ。会いたい人とか楽しい人って何人かいるけど、でも、いろんなことを平気にしてくれるのはイエスだけだって。なんでも大丈夫にしてくれるのはイエスだけだよ。そう思ったら十分一緒にいる意味がある。」

エスが「いろんなことを平気にしてくれる人」だとしたら、恋人はわたしをふくふくにしてくれた人だ。

食欲の秋。秋刀魚刺し食べに行こうね、銀杏と日本酒飲みに行こう、とこの秋もたくさん約束をした。いくつ叶えられるかな。

 

あなたと食べるご飯が、わたしは一番美味しいです。

 

今週のお題「秋の味覚」